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『Master and Commander:The Far Side of the World』

どうして私の好きになる映画はこうも配給会社からひどい扱いをうけるんだろうか…
旧日記の方にも書いた『マスター・アンド・コマンダー』ですが、例の大嘘予告フィルムの件で、『指輪物語』字幕の一件と同じように、ファンからの草の根の抗議が行われています。
詳しくはこちらのサイトさんにて↓
映画「マスター・アンド・コマンダー」の宣伝に関する意見とお願い

ほんとにそう思いますよ、これは。私はビリー・ボイドのファンで、そっちからこの映画を観たので、恐らく予告がどうであれ、観に行ったとは思うのですが、もし、日本で、この予告を観てから劇場に足を運ぶとしたら、物凄く覚悟が必要だったと思います。幸いな事に、私は今年の正月、ロンドンでこの映画を観る機会があったため、誠に素直な気持ちで観賞する事が出来た訳ですが。
そして観てすぐ、このお話(映画だけでなくその後読んだ原作も含めて)が大好きになりました。上記のサイトのサイトマスターさんが、「指輪物語を好きな人は、この話も好きになるはず、なのに、『王の帰還』の上映時に、あの予告が流れた為に、多くの人は『マスター・アンド・コマンダー』を観るのを止めただろう」というようなことを書いてらっしゃいますが、まさにそこなんですよね、この‘大嘘予告編’の怖いところは。
あの予告編を観て、「観に行きたい」と思った人は、『マスター・アンド・コマンダー』を観ても、面白いともなんとも思わない、むしろ「裏切られた」気持ちになると思います。でもって、あの予告編を観て、「ぜってー行かねー!」って思った人こそ、あの映画を観に行くべきなんですよ。私自身、実際に、複数の指輪ファンと話をして、「指輪ファンが観に行く気を削がれた(むしろ観に行かないと決意した)」現象は確認済みです。そして、「そんな映画じゃないんだよー」と説明したところ、「それなら観に行きたい」と、多くを語らずともすぐに『マスター・アンド・コマンダー』の魅力を理解してくれた、ということもありました。
ね、不遇でしょ、この映画。本当の客層は予告を観て「ひどい映画だ」って思って観に行かない。本来この映画の客層ではない、むしろこの映画を好きになるとは思えない客層が観に来て、「ひどい映画だ」って酷評する。どう考えても、これは、この映画をヒットさせたくないとしか思えない。何考えてるんだBVJ。

因に、上記のサイトさんを隅々までゆっくり読む暇がないと言う方へ、要点を纏めておきますと、
・TV及び劇場で放映された予告編、またチラシ等の宣伝文句は、本来の『マスター・アンド・コマンダー』の内容とかけ離れている。
・甚だしいのは、「その兵力を補うために英国軍が送り込んだのは、まだ幼い少年たちであった」の文言で、これは本編の中に無いばかりか、原作とも、あまつさえ歴史的事実ともかけ離れている。
・予告に登場するブレイクニー士官候補生の母親に関する描写は本編では全く無く、予告編で使われた女性のポートレイトや、ロケットペンダント等は、他の乗り組み員の妻や家族の物である。また、彼の「母親への手紙」は、全くの捏造で、本編にも原作にも全く存在しない。
・映画の原作では、艦長ジャック・オーブリーと、船医スティーブン・マチュリンの2人のバディが主人公なのだが、予告編では船医に関してはまったく触れられていない。
・『マスター・アンド・コマンダー』は、「戦場に送られた年端も行かない少年の悲劇」ではなくて、「自分が何処に居て何をしなければならないかを充分に承知しており、また己の能力をフルに使って‘為すべき事’、‘己に為せる事’を確実に為し、なおかつ、それを‘日常’にしている、プロフェッショナル達の物語」であり、「ナポレオン戦争時代の帆船での航海の様子をリアルに、時にユーモアを交えて再現した歴史物」である。
・予告編を観て嫌悪感を覚えた人は、すぐに劇場に足を運んで、この映画を堪能するべきである。この映画は、そのような人達の為にこそある。
ということになるでしょうか。
by radwynn | 2004-03-18 14:08 | Movie
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